子供に変な名前をつけないで!「名前は親からの贈り物」変な名前を贈らないで!

名前を名乗るのがいつもおっくうだった。自分の名前を口にするたびに、相手は不思議そうな目で、あるいは戸惑った目で彼女の顔を見た。青豆さん? そうです。青い豆と書いて、アオマメです。会社に勤めているときには名刺を持たなくてはならなかったので、そのぶん煩わしいことが多かった。名刺を渡すと相手はそれをしばし凝視した。まるで出し抜けに不幸の手紙でも渡されたみたいに。電話口で名前を告げると、くすくす笑われることもあった。役所や病院の待合室で名前を呼ばれると、人々は頭を上げて彼女を見た。「青豆」なんていう名前のついた人間はいったいどんな顔をしているんだろうと。

ときどき間違えて「枝豆さん」と呼ぶ人もいた。「空豆さん」といわれることもある。そのたびに「いいえ、枝豆(空豆)ではなく、青豆です。まあ似たようなものですが」と訂正した。すると相手は苦笑しながら謝る。「いや、それにしても珍しいお名前ですね」と言う。三十年間の人生でいったい何度、同じ台詞を聞かされただろう。どれだけこの名前のことで、みんなにつまらない冗談を言われただろう。こんな姓に生まれていなかったら、私の人生は今とは違うかたちをとっていたかもしれない。たとえば佐藤だとか、田中だとか、鈴木だとか、そんなありふれた名前だったら、私はもう少しリラックスした人生を送り、もう少し寛容な目で世間を眺めていたかもしれない。あるいは。

引用:小説『1Q84』村上春樹

村上春樹の『1Q84』という小説の引用です。

主人公の名前は青豆雅美。女性。

青豆(あおまめ)という苗字。珍しい苗字です。

もし、目の前に青豆という苗字の女性がいたら、あなたはどう思いますか?僕だったら心の中で笑ってしまう気がします。

「青豆といいます」なんて自己紹介されたら青豆を連想してしまうからです。

青豆と自己紹介されたら確実にこれを連想して、心の中で笑ってしまうと思います。

僕と同じリアクションをする人は多いと思います。

中には「青豆」と言って本当に笑ってしまう人もいると思います。

名前によって笑われるところを想像してみてください。自分が「青豆」という苗字で他人に笑われるところを想像してみてください。

どんな気持ちになりましたか?

おそらくほどんどの人は不快な気持ちになったと思います。名前のせいで不快な思いをするなんて理不尽だと思ったと思います。

変わった名前の人はそういう理不尽な思いをすることが多くなります。変わった名前であればあるほど理不尽な思いをする頻度は高くなります。

それを憶えておいてください。そしてそれを自分の子供の名前をつけるときに思い出してください。思い出すことができれば子供に変な名前をつけずにすむと思います。

かつて自分の息子に「悪魔」という名前をつけようとした父親がいました。

悪魔。

こんな名前をつけられたら、この子供は確実に名前のせいで不快な思いをする人生を送ることになると思います。

そんな子供を不幸にするような名前を実の父親がつけようとしたのです。

「珍しい名前だから人の記憶に残る。人の記憶に残り、人が集まる。そうなれば普段出会わない人と出会う確率も上がるし、いろんな良い経験もできると思うんですよ」

「悪魔は悪の世界で最強。何かでトップになる、そんな子供に育ってほしいから」

父親の言葉

という理由で父親は息子に悪魔という名前をつけようとしたのです。

子供は親の所有物ではありません。悪魔という世間に後ろ指をさされるような名前をつける権利はありません。

でもこの父親は悪魔という名前をつけようとしたのです。

役所はこの名前を受理しませんでした。それを不服に思った父親は裁判を起こしました。結果、父親が勝訴しました。

裁判所は『悪魔』という名前を認めたのです。

信じられない判決です。こんな世間に後ろ指さされるような名前を裁判所が認めるなんて。

ですが、この判決に満足したのか、父親は息子に『悪魔』と名づけることをやめました。やめて「亜駆(あく)」という名前をつけました。

「亜駆(あく)」という名前には『悪魔』という意味が込められているのだと思います。父親はなんのコメントも発表してないので真意はわかりません。でも「亜駆(あく)」という名前に『悪魔』という意味が込められているとしか僕には思えません。

どうして悪魔というネガティブな名前に執着するのか僕には理解できません。

たぶんこの父親はまともな感性の人間ではなかったのだと思います。

この父親は後に窃盗事件と覚せい剤所持で捕まっています。以下のサイトにそのことが書かれています。

【悪魔ちゃん命名騒動】本人の現在と父親のその後

こんな父親のように子供に変な名前をつける人間にはならないでください。

名前は親からの贈り物です。子供が喜ぶような素敵な贈り物ができる人間になってください。

僕は子供に変な名前をつける親が嫌いです。僕自身が名前のせいで不快な思いをする人生を送ってきたからです。そのせいで劣等感が強くなり、人間不信になり、うつ病になった経験があるからです。

だからこれから親になる可能性のある人には自分の子供に変な名前をつけない人間になってほしいと思います。

最近キラキラネームをつけることが流行っています。キラキラネームも子供に理不尽な苦痛を与える可能性がある名前です。

キラキラネームをつけるときも『この名前をつけたら子供はどんな人生を送ることになるだろう』と冷静に考えてください。自分のご都合主義的な未来予想をするのではなく、現実的な未来予想をしてください。いじめられる可能性はないか、後ろ指さされる可能性はないか、を真剣に考えてください。

そうすればきっと最高の名前を子供にプレゼントできると思います。

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