【学校の怖い話】貧血女子校生、保健室で不気味な子供に出会ってしまう！
このN学園にはとても七不思議では収まらないほどの怖い話が溢れている。それこそ怖い噂がない場所はない、と言い切れるぐらい。
そんな学校で卒業するまで一度も行かないような場所があるよね。たとえば保健室とか。
保健室って一度くらいは行きそうでしょ？でもね、怪我をしたり病気にならないと行かないものなんだよ。
だから実は一度も行ったことがないって人、探すといるんだよね。その代わり、頻繁に行く人もいるんだけどさ。
保健室登校ってあるじゃない。学校に来ても、教室には来ないで保健室とか別室で過ごすってやつ。
不登校の一歩手前とか、逆に不登校が改善されてやっと学校に来られるようになったけれど、まだ教室には入れないのでなれるまでは保健室で過ごさせる、とかね。
もちろん仮病で保健室に逃げる生徒もいるよ。嫌いな先生の授業とか、苦手なテストとか、あとは単純にかったるいとか面倒くさいとか。
まあ、そういう連中は次第に学校に来なくなったり、どこかで問題を起こして校長に呼ばれることになったり、ろくでもない末路をたどるんだけれどね。
でもね、中には学校が大好きなのに保健室に通う生徒もいるんだよね。昔この学校の生徒だった松原さくらさんも、そんな生徒の一人だった。
彼女は生まれつき体が弱く、いつも貧血で悩んでいたの。重度の貧血症だったの。なので中学生のときからほとんど体育も見学だったし、暑い日や寒い日は学校に来られたとしても一日保健室で過ごしていたのよ。それで高校に入ってからもそれが続いていたわけ。
保健室に行ったことがある人は知っていると思うけれど、うちの学校の保健室ってとても大きいんだよね。小さな病院と思えるほどだから。
まあ、N学園は生徒数が千人を超えるからね。それ相応の設備が必要になるんだろうけれど。
ベッドは全部で十台以上あるし、診察室も三ヶ所もあるから。それで保健室の先生も何人もいるんだよね。
それで保健室の先生って、学科を担当している先生と比べてあんまり知られてないんだよね。だって保健室に行かない限り、ほとんど関わらないでしょ。入学してから卒業するまで一度も顔を合わせない先生もいるもの。顔どころか名前だって知らないまま卒業ってこともあるわけよね。
でも、さくらさんは違った。保健室の常連さんだから。入学して一ヶ月も立たないうちに仲良くなってね。廊下で会っても、学校の外で会ってもすぐに保健室の先生とは話が弾むのよ。
彼女にとっては、担任の先生よりも保健室の先生のほうが恩師に思えただろうね。
特に彼女が慕っていたのは、葛城美和というまだ三十歳くらいの若くて美しい女の先生。まあ、若くて綺麗だからね。それに当時はまだN学園には来たばかりみたいでね。
男子にも相当人気があったようでさ。何人もいる保健の先生のことは名前すら知らなくても葛城先生のことだけはよく知っている男子生徒も少なくはなかったんだって。だから彼女に会いたくてわざわざ仮病を使う男子もいたんだよねえ。
もっとも葛城先生は男勝りで気が強かったそうだからさ。下手な仮病を使う生徒はどんどん蹴散らして追い返すんだってさ。
まあ、逆にそういうところに人気がある、という説もあるんだけれど。そんな葛城先生に、さくらさんは憧れ以上の感情を持っていたのかもしれない。
いつも貧血で歩くだけでも疲れてしまう彼女を葛城先生は強い口調で叱咤激励してくれたから。もしかしたら彼女が辛い思いをしてまで学校に通ったのも、そういう理由があったのかもしれないよ。
それは酷暑も厳しい９月のことだった。もうそこまで秋が迫っているというのに夏は帰りたくないのか、その存在感を私達に見せつける日が続いたの。
猛暑を超えた連日の残暑に、さくらさんの身体は悲鳴をあげていたの。それでも彼女は毎日学校を休まなかった。保健室に行くためにね。
その日、彼女は朝起きるのがとてもつらくて三時限目から出席したんだよね。もちろん、教室ではなく保健室に。まあ、そんなことは日常茶飯事だったからね。
担任の先生に遅刻してきたことを報告すると、先生も慣れたもので、すぐに保健室に連絡をしてくれてさ。それで彼女は安心して保健室に向かったの。
「失礼します」
ドアを開け、蚊の鳴くような声で軽く会釈すると、先生は誰もいなかったの。こういうことはよくあることだったの。基本的には保健室の先生は誰か一人は常駐することが決まりみたいだけれど、それでも急な事情で呼び出されたり、教育委員会に出向いたりすることもあるしね。
特に恐ろしい事件の多いこのN学園では、保健室で待つことよりも出向かなければならない事象も多いしさ。
だから、さくらさんは慣れていたわけ。いつものように勝手にベッドを使わせてもらえれば良いんだから。
その時、ふと机の引き出しからはみ出ている紙に目が留まったの。その紙が気にはなったけど、それよりも貧血の辛さのほうが勝っていたから、ベットに行くことにしたの。
ドアから一番近い所にあるベッドに向かったの。ベッドは十台以上あったけれど、それぞれが白いカーテンで区切られていてね。そのため、いちいちカーテンを開けて中を確認しなければならないの。
さくらさんは入り口から一番近いベッドに近づき、そっとカーテンを開けて中を覗いたの。
すると、ベッドには一人の女子生徒が仰向けになって、すやすやと眠っていたじゃない。気づかなかったけれど、先客がいたの。
青白い顔をした彼女は胸元で手を組んで、じっと動かず静かに横たわっている。まるで死んでいるかのように。
よほど深い眠りに落ちているのか、さくらさんは起こしてはいけないと思い、そっとカーテンを閉めた。隣のベッドに行き、そっとカーテンを開ける。
すると、そこにも同じように青白い顔をした女子生徒が仰向けに手を組んで寝ているじゃない。
起こしてはいけない、そう思ってまたそっとカーテンを閉めたの。そして次のベッドに行き、またカーテンを開ける。でも、そこもまた同じように生徒が寝ている。
もう九月だというのに、今日はとても暑い。この暑さでは熱中症になるのも無理はないだろうな。
たまにはこういうこともあると納得し、さくらさんは次々とベッドを覗いていったんだよね。しかし、ベッドを除くたびにさくらさんは言い知れぬ不安を感じたの。だって覗くたびに、ベッドが埋まっていたんだもの。
しかも、そのすべてが青白い顔をした女子生徒が死んだように眠っているんだよ。気味悪くない？もちろんみんな別人だよ。髪型も違うし、当然顔つきも違う。ただ、みんな青白い顔をしていたの。
とうとう、最後のベッドになってしまった。もしかしたら、このベッドも埋まっているかもしれない。そんな不安が一瞬よぎってさ。そうっとカーテンを開けて隙間からベッドを覗くと・・・やはりベッドには青白い顔をした女子生徒が仰向けに寝ていたのよ。
こんなこと、今までに一度もなかった。いくつかのベッドが使用されていることは当たり前のようにあったけれど、すべてのベッドが使用されていたのは初めてだった。しかも、誰か先客がいたとしても全員が同じ姿勢で寝ているなんて。
先生もいないのだから、仮病で来た生徒が騒いでいてもおかしくない。なのに、誰も騒がない。それどころかまるで誰もいないのかごとくシーンと静まり返っているんだ。
その時、彼女は突然息苦しさを感じてね。この部屋には嫌な気が満ちている。もともと冷感は少なからずあったからさ。病弱という短所と引き換えに神様がくれた能力かもしれないよね。
え？神様じゃなくて悪魔かもしれない？まあ、確かに冷感が強いということが長所かどうかはわからないよね。
窓を開けなきゃ。とにかく窓を開けてこの悪い空気を入れ替えよう。ふらつく足取りで何とか窓際に立ち、窓を開けた。が、なぜか窓は開かなかった。固く閉ざされ、押そうが引こうがビクともしない。確認しても鍵は掛かっていない。それなのに、何か強い見えない力が窓をしっかりと押さえているようで、ビクともしない。
彼女は目眩を覚え、さすがに立っていられなくなり、ソファーに腰を下ろした。保健室には大きくて立派な年代物の赤いソファーが置かれていたからね。いつもとはどこか違う奇妙な雰囲気をソファーに感じながらも、そっと腰を下ろしてみる。
葛城先生が、ここで横になって休んでいるのを何度か見たことがあった。休もう。とりあえず、ここで横にさせてもらおう。
彼女は短い深呼吸をした後、ゆっくりとそのソファーに身を委ねた。そして静かに目を閉じた。
目を閉じて呼吸を落ち着ければ次第に楽になる。なあに、心配することはない。ここには自分のほかに何人もの生徒が寝ているのだから。自分は一人じゃない。それにすぐ誰か先生が戻ってくるはずだ。
「おいでよ」
突然、誰かが呼ぶ声がした。
「おいでよ」
声はまた聞こえた。か細く小さな声。それでも気のせいでも空耳でもない。はっきりと聞こえてきた。
さくらさんは静かに目を開け、横になったまま辺りを見回した。しかし、誰の姿もなかったの。
もしかしたら、ベッドで寝ていた誰かが目を覚まして私を読んだのかもしれない。彼女はゆっくりと起き上がった。
先程より幾分か楽になっていたわ。呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がり、そしてベッドに歩み寄った。
そっとカーテンを開けると、そのベッドにはまだ先ほどと全く同じ姿勢のまま生徒が横たわっていたわ。
本当に生きているのだろうか。まさか死体ではないだろうか。
起こしたほうがいいかもしれない。そう思った彼女は、ゆっくりと手を伸ばし寝ている生徒の頬に触れようとしたわ。
そのとき、ふっと冷たい風が彼女の頬を舐めあげた。その風の氷のような冷たさにぞっとし、思わず伸ばした手を引っ込めたの。
風はどこから来るのだろう。見ると、窓を覆っているカーテンが風を孕んで大きく膨らんでいた。
その動きがまるでカーテンの影に人が隠れてバタバタと暴れているようだった。
しかし彼女はその時、言いしれない寒気を感じたの。確か今まで窓は閉まっていた。いつの間に窓が開いたのだろう。私が眠っている間に誰かがベッドから起きて窓を開けてくれたのかもしれない。もしくは先生が帰ってきて窓を開けてくれたのかもしれない。
さくらさんは、恐る恐るゆっくりと窓に近づいていった。
ザワザワ・・・ザワザワ。近づくたびにカーテンが暴れる。
さくらさんは一歩ずつ窓に近づき、カーテンを掻き分けた。
「ひっ」
さくらさんは小さく叫ぶと咄嗟に伸ばした手を引っ込めたわ。今カーテンを掻き分けようとしたら、その奥から何か手のようなものが伸びてきた。見間違いじゃない。あれは黒ずんでいたけれど人間の、ミイラのような手だった。
さすがにそれ以上は窓に近づくのを諦め、一歩二歩と後退りしたわ。その時、バサバサバサバサッ！風に煽られカーテンが膨れ上がると、まるで腹をすかせた獣のように襲いかかってきたの。彼女は言葉を失い、動くこともできなかった。
生暖かい風が、彼女の頬を舐め回すように撫でていく。そしてカーテンは何事もなかったように動かなくなった。
窓は・・・開いていなかった。カーテンが襲いかかる一瞬で、彼女は窓が固く閉ざされたままだったことを確認した。それを裏付けるようにカーテンは全く動かなかったの。どこからか吹いてきた風もピタリと止んだわ。
出よう。この保健室はどこかおかしい。いつもの保健室じゃない。
さくらさんは身の危険を感じ、この保健室を一刻も早く立ち去ることに決めた。しかし、気持ちとは裏腹に目眩がどんどんひどくなっていくの。
ダメだ・・・もう立っていられない。
そして、近くにあったベッドに手をつくと、なぜかそのベッドは空いているじゃない。ついさっきまではすべてのベッドが埋まっていたのに、いつの間に帰ったのだろう。
これ以上、立っているのは無理。さくらさんは止むに止まれず、そのベッドに身を任せた。
この保健室から逃げなければならない、そう頭は指示を出しているはずなのに体が言うことを聞いてくれないの。
ベッドに横たわり早鐘のように脈打つ鼓動を少しでも抑えられるように深呼吸を繰り返した。しかし気持ちは落ち着くどころか、言いしれない恐怖に侵食され息苦しくなるばかり。
「おいでよ」
まただ。また自分を呼ぶ声が聞こえてきた。見ると、自分の枕元のカーテンに大きな影が写っていた。その影はひょろりと痩せており妙に背が高いの。天井に打ち付けられているカーテンレールを超えてしまいそうなほどの身長でさ。
ゆうに二メートル以上はある。そんなに背の高い人がいるわけない。これは人間の影じゃない。
すると影は、ゆらりゆらりとゆっくりと左右に揺れ動き始めた。
なんだろう。なんだろう。そう思い視線を影から外そうとするのだけれど、目は影に釘付けになり動かない。
ひょろひょろとした影は右に左にうねうねと身をくねらせながらどんどん伸びていき、その頭の部分が天井にあるカーテンレールの留め金にたどり着いた。
影は留め金と天井の隙間から、赤くて大きな目でこちらをじっと見ていた。
ザザザザザッ！次の瞬間、ベッドの周りを覆っていたカーテンが一瞬にして開いたの。それは人間のなせる業ではなかった。ベッドの周囲をぐるりとか混んでいるカーテンが一瞬で開くなんてあり得ない。頭では理解できても、今眼の前で起きている現実に頭が付いていかない。そしてカーテンが開くと同時に影は消えていた。
身長何メートルもあろうかと思われていた影は跡形もなく消えていたのよ。
「来たよ」
その時、自分の耳元で突然声がしたの。
「来てくれないから・・・来たよ」
その声の主は子供のようだった。というのは、ベッドから見えているのは頭だけで、その体はベッドの下に隠れて見えなかったから。
身長は１メートルほど。しかし、その子供の顔は見えない。なぜかって？頭には医者が手術の時にかぶるメディカルキャップと、顔が全部隠れるほどの大きなマスクを着けていたから。
メディカルキャップとマスクの間からかろうじて眼だけが見えていた。それは赤い目だった。白目と黒目というものがなく、眼球自体が赤かったの。
「君は貧血だね」
どういうわけか、その赤い目をした子供は突然そんなことを耳元で囁いた。
「はい」
彼女はまるで促されるようにそう答えてしまった。
すると赤い目の子供はケケケケッと笑った。もちろん目しか見えていないのだけれど、マスクのしわが笑っているように動いたからね。
その時、初めて彼女は気づいたのよ。この顔、おかしい。もちろん、赤い目をしているという時点で人間とは思えない。しかしそれ以上に、その子供の顔は異様に突き出しているんだよ。
まるで鼻と口をつかんで引き伸ばしたというか、犬やキツネのように尖った顔がマスクの上からも見てもわかるの。
「貧血には血が必要だね」
その声はとてもうれしそうだった。
さくらさんは逃げなければいけないと頭では考えているけれど、まるで金縛りにあったように身動きが取れないから。叫ぼうにも声も出ない。ただ、動かせるのは目だけだ。
「それでは輸血をしましょう」
子供は嬉しそうだった。
殺される。さくらさんは、そう直感した。急いでここから逃げないと、この赤い目をした子供に殺される。
しかし、そんな彼女の思いをよそにその子供は何やら一生懸命に準備を始めてね。点滴をするときに使うキャスター付きのスタンドを運んでくると彼女の枕元に置いた。どうやら、これを使って彼女に輸血をするみたい。
「や、やめてください」
さくらさんはやっとのことで声を絞り出した。しかしそんな言葉を無視して子供は嬉しそうに聞いてきたの。
「カエルとネズミ、どっちがいいですか？」
さくらさんには、その言葉の意味がわからなくて。でも子供はまるでこれから起こることが楽しくて仕方がないのか。嬉しそうに首をくるくる振ってくる。
その言葉の意味の恐ろしさを察し、彼女の眼には涙が溢れてきたわ。声は声にならず、ただひたすら首を振り抵抗した。
「それではネズミにしましょう」
そう言ったが早いかスタンドの輸血パックをひっかけるフックに、巨大で透明なポリ袋をひっかけられた。
そしてその中には何十匹という生きたネズミが押し詰められ、逃げ出そうと必死でもがいていたの。
きい、きい、きい、きい・・・。その悲痛な声はまるで自分の声のように思えてね。
「輸血は生きのいい血に限ります」
そう言いながら、赤い目の子供はポリ袋の上からネズミを一匹ずつ握りつぶしていった。ぐしゅ、ぐしゅ、ごり、ばき、ぐしゅっ、ぐじゃっ・・・なんとも言えない音が混ざり合い、その音に交じりキイキイ泣き叫ぶネズミたちの断末魔が聞こえてくる。
「うまそうだな。本当にうまそうなネズミだ」
舌なめずりする子供の目はらんらんと赤く輝き、マスクの隙間から赤く細い舌がチロチロと見え隠れした。
「こんなに生きの良い血を輸血してもらえるなんて、君は本当に幸せ者だね」
そしてポリ袋の底に張り付けられた、まるでゴムホースのように太い筒の先を彼女の目の前にチラつかせるのよ。
筒の先には、のこぎりの歯のようなトゲがびっしりと生えていてさ。そしてその刃が左腕に突き刺さり、血管にねじ込まれた瞬間、あまりの痛みに彼女は気を失ってしまった。
「・・・いやあっ！」
「さくらさん、さくらさん。大丈夫？」
彼女は優しく声を掛けてくれる葛城先生の声で目が覚めたわ。
先生の顔を見た途端、彼女は安心して大声をあげて泣き出した。先生はさくらさんを落ち着かせ、何があったのか話を聞いたわ。
話を聞いたのち、先生は少し考え込んでからため息を漏らしたの。そしてこんな話をしてくれた。
その保健室では、昔ある事件が起きたんだって。
いつもいじめられている女子生徒がいて、彼女はいじめっ子たちから逃げるためによく保健室を利用していたそうよ。
しかし保健室の先生が外出している隙を見計らって、いじめっ子たちは彼女にネズミやカエルを食べさせるひどい虐めをしたそうなの。
もちろんいじめっ子からすればほんの些細な冗談だったけれど、いじめられた彼女は喉にネズミを詰まらせて死んでしまったんだって。
それが起きたのがちょうど今日のことで、その日は彼女の命日としていまだに一部の関係者は彼女の魂を偲んでと弔い慎むそうよ。
さくらさんは、たまたまその日に保健室に来てしまい、奇妙な体験をしたんだろうね。
ちなみにこの体験をした松原さくらさんは私の知り合いのお姉さんなの。今はすっかり元気になってOLをしているんだよ。
なんでも、この奇妙な体験をしてからというもの貧血が治ったんだってさ。ネズミの血のおかげかもね。
それからは保健室に行くこともなく、学園生活を謳歌したんだからラッキーだよね。
たしかに食生活で貧血は治療できると言われているけど、重度の貧血がそんな簡単に治るものなのかな？
ただ貧血が治った代わりに、さくらさんはネズミやカエルを見ると「美味しそう」と言って、赤い舌をチロチロ覗かせるんだよね。
あなたも、あの命日の日にだけは保健室に行かないように気をつけたほうがいいよ。何が起きても知らないからね。
というのがこのN学園に伝わる保健室の怖い噂なんですけれど、世界的なジャーナリストを目指す私はこれで話を終わらせませんよ。
私、この事件が事実かどうか詳しく調べてみたの。そうしたら本当にあったんだよ。この事件。
それでいじめを行ったいじめっ子グループなんだけれど、学校側の調査の結果いじめはなかったと判断されて何の罪にも問われなかったんだってさ。
学校側の隠蔽だよね。まったく酷い話だよ。でもね、それから一ヶ月と経たないうちにいじめっ子グループのメンバー全員が、保健室で大量の睡眠薬を飲んで集団自殺を図ったんだって。
ベッドの上で仰向けになって、まるで眠るように死んでいたらしいよ。それは学校側がひたすら隠して表沙汰にはならなかったんだけれどね。
それで、そのときのいじめられて亡くなった被害者の名前なんですけれど、葛城聡子っていうんだよ。
葛城・・・気になりません？これについて、私は現在調査中です。