【実体験】盲腸の手術は痛くない?いやいや、痛かったよ。すごく痛いし、苦しかったよ。

高校生のとき、お腹が少し痛かったので病院に行きました。

50歳くらいの初老と言ってもいいくらいの容貌の医師が僕の診察をしてくれました。

僕「1週間くらいお腹が痛いんです」

と僕は答えました。

医師「ちょっと調べてみようか」

というわけで僕は体を調べてもらうことになりました。

結果、盲腸の可能性があると医師に言われました。

盲腸?この僕が盲腸?

信じられませんでした。僕は健康だけが取り柄みたいな男だったんです。その僕が、健康の代名詞みたいな僕が盲腸。本当に信じられませんでした。夢を見ているのではと疑うくらい信じられませんでした。

でも、お腹が痛いのは確かでした。耐えられないような痛みではないが、寝るときに鬱陶しいと感じるくらいの痛みを常に感じているのも確かでした。

だから初老に見える医師の言葉を信じざるを得ませんでした。

僕は手術を受けることになりました。

母親も付き添いで来ていたので、保護者の同意を貰って、高校生の僕は生まれて初めての手術を受けることになりました。

初めての手術室。当たり前ですが、手術台がありました。それを見て、ああ、僕はこれからあの上で手術を受けるんだと思って、恐怖を覚えました。

これから自分の腹をメスで切るんだと思うと逃げ出したい気持ちになりました。でも、僕は男の子。逃げるわけにはいかないので、服を脱ぎ、全裸になり、手術台の上に寝ました。

全裸の僕にマスクをした看護婦さんが剃毛しますね」と言って僕の陰毛を剃り始めました。

生まれて初めての陰毛の剃毛。一度も剃ったことのない陰毛を他人に剃られる・・・今、剃られている。

10代の僕には恥ずかしいことでした。息子が大きくなったらどうしようと思いました。でも、それは杞憂でした。これから手術だという緊張のせいで男の本能が縮ってしまっていたからです。

おかげで息子が大人にならずにすみました。

後で聞いた話ですが、剃毛のとき、息子を大きくする患者さんがいるそうです。

その話を聞いたとき、ああ、あのとき、大きくならずによかったと思いました。

もし、なっていたら黒歴史になっていたと思います。

剃毛が終わり、部分麻酔を受け、手術の時間になりました。

盲腸の手術は痛くない。

そう誰かが言っていたのを僕は覚えていました。

僕はその言葉を信じて、手術の進行を見守りました。

でも、その言葉は嘘でした。むちゃくちゃ痛かった。

僕「やめろ!馬鹿医者。殴るぞ」

と怒鳴りたくなりました。

僕「くそ!痛くないって言った奴誰だ?嘘つきが」

と憎悪に満ちた声で言いたくなりました。

それくらい痛かった。本当に痛かった。

お腹を切るところはあまり痛くありませんでした。

問題は切ったあとです。

切ったあと、医師は患部を探し始めたのです。

あの僕を診察・診断した初老に見える医師です。

その医師が患部、つまり盲腸を探し始めたのです。それが痛い痛い。

医師が患部を目視できるようにするために僕の腸を右に動かしたり、左に動かしたりしているようでした。

その腸を動かす行為が本当に痛い。痛いし、苦しい。吐き気が込み上げてくるくらい苦しい。その苦しみが腸を動かされるたびにやってくる。痛みも同時にやってくる。

そんな痛みと苦しみの時間が5分くらい続きました。

その5分の間、

痛い痛い痛い!苦しい!痛い!苦しい!苦しい!痛痛痛!苦苦苦!

という言葉だけが僕の心の中で渦巻いてました。

もう、自分の腸を元の状態に戻せないんじゃないかってくらい腸を動かされまくったように思いました。痛みと苦しみのせいで意識が朦朧としていました。

こんな辛いのは生まれて初めてでした。

こんな辛い思いするくらいなら盲腸の手術なんて受けなければよかったと後悔しました。

本当に麻酔効いてるのかと思いました。麻酔効いてないからこんな痛く苦しいのではないかと思いました。

ああ、死ぬ。

僕は死さえ覚悟しました。

それくらい盲腸の手術は痛く、苦しかったんです。

他人に腸を動かされることがこんなにも痛く苦しいことだなんて知りませんでした。知っていたらぜったいに手術なんて受けませんでした。

もし、歯医者みたいに「痛かったら手をあげてね」とこの初老に見える医師に言われていたら確実に僕は手を上げていたと思います。何度も何度もしつこいくらいに手を上げていたと思います。

でも、たぶん手を上げても、この初老に見える医師はこう言ったと思います。「我慢してね」と。歯医者と同じように・・・

医者はみんな嘘つきだと僕は思いました。

きっと盲腸の手術が痛くない、という嘘話を流したのも医者に違いないと思いました。

患者が逃げないようにするためにそんな嘘話を流したに違いないと思いました。

それくらい盲腸の手術は痛かった。厳密には他人に腸を動かされるのが痛苦しかった。

もうやめてくれ!

と命乞いをしたいくらい痛苦しかった。

でも、なんとか僕はその手術を乗り越えました。生まれて初めて僕は僕を褒めてあげたいと思いました。同時に初老に見える医師を殴りたいと思いました。僕と同じ思いをさせてやりたいと思いました。医師の腹を切り、腸を弄り回してやりたいと思いました。他人に腸を動かされるのがどんなに痛苦しかをわからせてやりたかった。

でも、さすがにそんなことできません。

僕は一応、医師に礼を言いました。

そして僕は病室に戻りました。

その夜、僕は夢を見て、うなされました。

夢の中でまた僕は盲腸の手術を受けていました。そして腸を弄り回されて、痛苦しい思いをしました。

退院した後もときどきこの悪夢を見ました。10数年がたった今でもこの悪夢を見ます。

盲腸の手術は僕にとって苦痛だったんです。トラウマになるくらい苦痛だったんです。今でも悪夢を見るくらい苦痛だったんです。

盲腸は痛くない、という話、信じないほうがいいですよ。

そんなの医師が流した嘘話ですから。きっと。

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